リール撮影機材の選び方
最初に買うべき撮影機材とは?
広角から標準までカバーできるレンズがあればそれ1本でかなり撮りやすくなる
スマホから一眼に乗り換える際には、最低限4K/60pで撮れるものがいいかなと思います。理由としては、観光系の動画であればスローで見せることも多いからです。さらに、10bit Log撮影のできる一眼であれば、どのメーカーのものでもいいんじゃないかなと思います。
レンズに関しては標準域であれば問題ないですが、僕の場合は、お寺の中などを撮影するときに標準の24mmからだと厳しい場合が多いため、LUMIXの広角から標準までカバーできる20-60mmのレンズを使用しています。ただ、個人的には20-70mmくらいあるとそのレンズ1本でかなり撮りやすくなるんじゃないかなと思います。
あとは、ジンバルがあると建物などを撮る際に動きを出すことができるので、最初の段階で購入しておいたほうがいいですね。フィックスで撮るとなると、どうしても静止画と変わらなかったりするため、ジンバルで寄ったり、スライドできるほうが画角にバリエーションが出ていいと思います。
機材選びのポイント

メインカメラ
4K/60p 10bit Log撮影できるミラーレス一眼カメラ

広角 or 標準ズームレンズ
20〜70㎜をカバーできる標準ズームレンズ

ジンバル
安定した映像撮影のための必須アイテム
Miyanishiさんの主な使用機材
パナソニック LUMIX S5 ⅡX

パナソニック LUMIX S9

LUMIX S PRO 16-35mm F4

LUMIX S PRO 24-70mm F2.8

LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S.

LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6

LUMIX S 18mm F1.8

LUMIX S 50mm F1.8

LUMIX S 85mm F1.8

NiSi 可変ND TRUE COLOR ND VARIO

DJI Flip

FalcamTreeRootクイックロックトラベル三脚

YC Onion Pineta Pro

DJI RS 4

DJI RS 4 Mini

観光系リール市場の現在地
観光系リールの現状分析
その発信者にしかできないような独自の世界観やひと工夫が大事
僕が始めてバズったときと今とではまた状況がまったく違っていて、当時はまだリールを発信している人自体がそこまでおらず、綺麗な絶景スポットを投稿すれば、わりと伸びやすいという時期でした。現在はリールに参入する方が本当に多くて、普通に綺麗な動画を投稿するだけではなかなか伸びなくなってきているんです。もちろん、その中でもバズを生み出して伸びているアカウントはたくさんあるので、その発信者にしかできないような独自の世界観やひと工夫が大事になってきます。
ただ、観光系動画の需要自体は上がってきていて、仕事依頼も本当に多く来るようになりました。僕は営業を基本的にはしないスタイルなので全て受け身なんですが、それでもここ半年くらいで依頼はどんどん増えています。



海外向けリール市場の可能性
日本らしさをプラスした表現が現在の観光リールでは伸びやすい
僕はリール投稿をスタートした頃から、海外向けに発信していました。理由としては、奈良公園には海外の方がよく来ていたので、その層を奈良に呼び込みたいと考えていたんです。実際、現在僕のアカウントをフォローしている方々の8割は海外の方が占めています。その点からも言えるのは、やはり海外向けのリール市場は大きいということ。ホテルや自治体、企業なども海外市場を狙っているし、日本だけの良さを出しやすいので、そういったインバウンド需要を狙って海外向けアカウントにするのはいいことだと個人的には思っています。
また、日本人にとっては当たり前なものが、海外の方にとっては特別なものだったりするので、綺麗な動画を出すだけでなく日本らしさをプラスした表現が現在の観光リールでは伸びやすいと感じています。具体的に言えば、神社や着物、鯉などの日本にしかない文化は海外の方に刺さりやすいですね。未だに僕のリールを見た海外のフォロワーからは「ここ、行ってきたよ」とDMや写真を毎日もらっているので、海外の方は本当によく見てくれている印象を受けます。

マーケティング視点が必要不可欠な理由
コンセプトやターゲットを絞り差別化を図った上でコンテンツを届ける
現在の観光リールに関しては、ただ綺麗なものを投稿するだけではなく、戦略を持って投稿しなければ数字を伸ばすのは難しいと考えています。
僕の場合、京都出身なので当然ながら京都について詳しかったんですが、当時は京都のクリエイターが多くいたため、ポジションを取るのが難しい状況でした。
一方、奈良には上手な写真家は多くいたものの、僕がリールを始めた当時は動画クリエイターがまだほとんどいなかったんですよね。なので、海外向けに反応が良さそうな奈良のスポットを巡ったり、ストーリーズで海外の方が知りたそうな奈良の知識を投稿してみたりと、地元の京都ではなく奈良に絞っての投稿を続けていきました。
このように、マーケティングの視点を持つことでコンセプトやターゲットを絞り、差別化を図った上で自分だけのコンテンツを届けることを意識していました。その結果、現在の数字に繋げることができたのではないかと考えています。
“バズる”ために必要な要素とは?
撮る前に考える3つの問い
「なぜ自分が撮るのか?」といった理由づけをしっかりと意識する
撮影するにあたり、「何を伝えたいか?」「誰に届けるのか?」「なぜ自分が撮るのか?」といった3つの要素を考えることが大事だと思っています。まず、何を伝えたいかという点に関しては、明確に「どういう感情になってほしいか」「どういう本能に向けて投稿するか」を考えたほうがいいと思っています。僕の場合、映像に加えてストーリーやキャプションで海外の方が読んだらうれしいだろうという情報を入れ込むようにしていました。
次に、誰に届けるのか。僕の場合は実際に存在する方に向けて作っていました。例えば、アリゾナ州に住んでいる45歳の知り合いがいるんですが、その方が日本に来たくても来られない状況を知っていたので、その人を想像しながら映像を作って投稿していました。
そして、なぜ自分が撮るのかといった価値観やストーリーを持っていると発信の仕方も変わってきて、ブレもなくなっていきます。ただ、数字を狙っているだけだとだんだんしんどくなってきちゃうんですよ。なかなかすぐにバズるものでもないですし、最初のコンセプトがしっかりしていないと続けること自体苦しくなってくるので、なぜ自分が撮るのかといった理由づけはしっかりと意識してスタートするのがいいんじゃないかなと思います。



バズる要素①「画質×情報×感情」
「この場所にはこんな魅力がある」という情報をパッと伝えなければいけない
今はiPhoneなどでも充分に綺麗な映像が撮れるので、できる限り高画質な動画を出すことはやはり最低限大事なことだと思います。
加えて、観光リールの場合は「この場所にはこんな魅力がある」という情報をパッと伝えなければいけないので、望遠系の寄りのショットだけでは情報が少ないです。僕の場合、広角の映像で情報がある状態から撮影することが多く、寄り引きをバランスよく入れるように意識しています。なるべく、1本のリールだけでその場所の雰囲気がしっかりと伝わるように作ることはとても大切です。
そして、特に重要なのは変化を入れることです。これは長い映像でも同じですが、飽きさせないようにする工夫です。「なんだこれ?」といった要素を入れるとやはり伸びやすいですよね。またカットごとの変化も大事で、寄り引き、撮っている角度、緩急などはショートであっても重要な要素になります。
最後は、「まるで○○のような世界観」にすること。僕が最初にバズった鬼滅の刃のような世界観だったり、ジブリのような世界観だったり、超大作の何かに似た世界観というのはやっぱり受け入れられやすいんですよ。日本はアニメ大国なので、アニメとうまく絡められるとものすごいバズが起きたり、コメントもたくさんつきやすいです。
鬼滅の刃のような世界観を連想させるカットを差し込むことで、うまく当時の流行に乗り、ファンの獲得に繋がった。
バズる要素②冒頭1秒のインパクト
分かりやすく綺麗なところから始めて興味を惹かなければなかなか見てもらえない
冒頭1秒のインパクトというのはやはり重要で、中でも構図は非常に大事な要素だと思います。バズっている作品見ていると、余分なものを省いてでもその場所の雰囲気が分かるような、情報量の多いカットからスタートしているリールがバズっている印象を受けます。つまり、言語化が綺麗にできる構図からスタートしている動画のほうが伸びやすいんです。また、SNSではコントラストがハッキリとしている動画のほうが伸びている印象があります。
そして、ビジュアルの力が観光リールには重要です。僕はスナップ動画が大好きでよく見るんですが、スナップ動画ってながら見するような方にはあまりウケない印象なんですよ。どちらかというと「うわ、何これ?」というくらい分かりやすく綺麗なところから始めて興味を惹かなければなかなか見てもらえないんです。今伸びている映像はこういった要素を押さえているものが多いと思いますね。僕も最初の頃は途中にいいところを持ってきていたんですが、現在は一番いいカットから必ずスタートするようにしています。なので、基本的にサムネイルもファーストカットと同じものを選んでいます。
ファーストカットにインパクトのあるショットを持ってくることで、視聴者の興味を惹くことが何より大事。
フォロワーが増える仕組みとは?
「この人のアカウントはチェックしないと」と思わせるような工夫が重要
世界観が統一されているアカウントのほうがフォロワーは増えやすい傾向にあります。というのも、バズった動画でついたフォロワーはその映像が好きなんです。なので、その世界観に近い映像が多く出てくるアカウントであればフォローに繋がりますが、世界観がバラバラだとフォロー転換率は下がってしまいます。
また、関係性の構築も大事な要素です。今はレコメンド機能がしっかりしているので、フォローしなくとも自分の好きなものが流れてくる時代です。つまり、昔に比べてフォローの意味が変わってしまっているんですFよね。なので、ストーリーズやDMで親近感を育むことも重要になってきます。例えば、ストーリーズだけの限定情報をマメに配信したり、質問ボックスを活用するなど、「この人のアカウントはチェックしないと」と思わせる工夫が重要になります。
そこまで一貫性のあるアカウントを作れれば、あとは動線を設計するだけでフォローに繋がると思います。プロフィール画像や文章を見て「これは自分のためのアカウントだ!」と感じさせた上で、その下に並ぶ動画の世界観が整っていれば大体の方はフォローしてくれるのかなと。

プロフィール設計のポイント
① “誰の/何の/どのような人向け”が瞬時に伝わる自己紹介
② プロフィール写真やキャプションに魅力を凝縮
③ フォロー後のメリットを明示


リール動画制作ノウハウ
撮影場所・時間帯の選び方
撮影する際の時間帯や角度を工夫することで無人映像に仕上げることができる
アカウントが大きくなってくると、自分の発見したスポットでもある程度見てもらえるんですが、最初のうちは有名な映えスポットでなければなかなか見てもらえないんですよね。個人的には二番煎じくらいの「そこまで投稿されていないけれど、めちゃくちゃ綺麗」な場所を探せるとすごくいいと思います。人気スポットでも、例えば早朝や閉館間際などを狙って行くことで無人映像を撮ることができます。人が入っていてもいいですが、無人映像のほうが映像に没入F感があり数字も伸びやすいんですよね。そういった理由から僕は必ず誰もいない時間帯を狙って行くようにしています。
また、撮影する際の角度を変えて人を隠すことでも、無人映像に仕上げることができます。例えば、京都の雪の降る八坂の塔の映像を撮った際も、左側の道に人がたくさんいたので、その部分を隠す工夫を施して無人のように見せています。
人の多い人気スポットでも、撮影する角度を工夫することで無人に見せることが可能。
縦構図の切り取り方
定番の構図は人気が出やすくInstagramにマッチするものも多い
縦構図の場合は、まず余分なものをカットする工夫が必要になります。例えば、空が入らないようにしたり、地面が映り過ぎないようにしたりなど、分かりやすさを重視した構図がいいと思います。
また、縦型の場合は手前と背景の階層を意識した構図が活かしやすいので、僕の場合は手前に前ボケを入れて前景と中景が分かれるところを探して撮るようにしています。
加えて、日の丸、シンメトリー、リーディングラインなどの定番構図はやはり人気なので意識するようにしていますね。特にInstagramだと、右側にいいねマークなどが並んでいて、下側には文章があるため、それらと被らないような構図にする際に、日の丸構図などはハマりやすいのでよく使っています。
縦16:9ならではの構図設計
① 手前→背景の階層を意識した構図が活かせる
② 日の丸、シンメトリー、リーディングラインは人気
③ 余分なものを入れない工夫


編集のプロセス
音楽なしでも綺麗に繋がるような映像を意識した編集を
編集にはいろいろなやり方がありますが、僕の場合はカットの繋がりを意識して作ってから、音源を入れ、最後に調整するという流れにしています。
元々はBGMから決めて、それに合うように映像を作っていたのですが、今思えばその当時のものは繋がりが少し変だったなと思います。なので、現在は音楽なしの状態でも綺麗に繋がるような映像を意識しています。
BGMに関しては、バズを狙うのであればやはり人気の音源を使ったほうがいいかと思います。僕は現在、そこまで数字を意識していないので、バズを狙うというよりは「静けさの中の美しさ」のようなものをテーマにした音源をピックアップして使用しています。
構成設計については、カットがあまり長くないほうが見てもらいやすいので、最低でも1〜2秒でカットが切り替わるように編集しています。
カラーグレーディング解説
Instagramリールに毎日投稿するための時短グレーディング

編集ソフトはDaVinci Re solveを使用。カラーページにて、ノードを5つ作る。


[ノード01]を選択し、スコープの波形を見ながらトーンカーブを調整することでコントラストをつけていく。


[ノード02]を選択し、主にホワイトバランスを調整していく。今回は[ミッド]の数値をマイナスに振って柔らかい印象に。



[ノード03]を選択し、ハイライトに赤みを足し、シャドウに青や緑を足し、シネマティックに仕上げていく。


[ノード04]を選択し、自身で作ったLUTを挿入。そのまま入れると濃過ぎるため、[キー出力]の[ゲイン]を調整し、20〜30%で適用。

[ノード05]を選択し、空のディテールが薄めだったため、[コントラストポップ]を入れてディテールが出るように調整。空の青みや光を足したい場合などは、さらにノードを足して色相・彩度を調整したり、微分補正で光を強めるなどして仕上げていく。



完成したルック。Miyanishiさんは基本的に毎日投稿をしているため1本のリールあたり20分程度で仕上げることが多い。


観光系リールを作る人に向けて
観光リールはまだまだ市場が大きくなる本当に夢のある業界
観光リールを作ろうと思うと、「たくさんの人に見てもらって仕事に繋げよう!」といきなり先走りがちですが、まずは「届けたい想い」や「誰にどんな価値を提供するのか」がしっかりとなければ、そもそも続けることが難しいと思うんです。だからこそ、バズるというだけでジャンルを選ばず、自分が投稿したいジャンルを探し出し、想いやコンセプトを作っていくことが大事だと思っています。
また、観光リールというジャンル自体、絶景スポットが人気な場所に集中しがちなので、どうしても他人の動画と似てしまいやすいです。人気クリエイターの映像を見ると、他と違ったカラーグレーディングやファーストカットの撮り方で個性を出す方もおり、コンテンツを見るだけで「この人の映像だ」と分かるような差別化のための創意工夫が重要になってくると考えています。
観光リールは今後インバウンド予算を入れていく自治体なども増え、まだまだ市場が大きくなる夢のある業界ですので、皆さんもぜひトライしていただけたらと思います。